大雪山地区で確認された台湾クロクマ。日中の活発な姿が撮影された。(行政院農業委員会林務局サイトより)
行政院(内閣)農業委員会林務局東勢林区管理処では、同林区における台湾クロクマの生息状況を調査するため、国立屏東科技大学の黄美秀副教授らによるチームに委託し、大雪山地区(台湾中部の台中市和平区付近)における台湾クロクマのコミュニティ監視活動を行った。その結果、2月から3月、同地区で使用されていない木材運搬用林道付近で、赤外線による自動カメラが台湾クロクマの活動状況を捉えた。 撮影された台湾クロクマは体型から見て別の個体で2頭。健康で活発な台湾クロクマ2頭が確認できたことは関係者を喜ばせた。そのうち1頭は体重100キロから120キロと比較的大きく、もう1頭は70キロ前後と見られる。体型の異なる個体がいることは同林区における台湾クロクマのコミュニティの構造が安定していることを示すという。 今回の調査では3台のカメラが、台湾クロクマが日中出没する姿を4度撮影することに成功。位置はいずれも森林区域内の針葉樹と広葉樹の天然の林で、標高約2000メートル。撮影データから日中と夜間のいずれも活動していることが分かった。過去の研究結果で、台湾クロクマは一日中活動するとされていたのと一致する。外国の研究では、クロクマは人為的危害の無い場所では日中活動する割合が増えるとされている。今回の映像記録以外に、同管理処の森林保護管理員と登山客による目撃証言も複数存在する。 台湾クロクマは台湾で絶滅が危惧され、保護対象となっている野生動物で、台湾全土の低標高地から高標高地で人為的な危害の少ない森林地帯に生息する。特に中標高地における広葉樹と針葉樹の混交林の環境を好む。分類上は食肉目クマ科ながら雑食で、植物を主食とする。臭覚と聴覚が鋭く、危険に遭遇すると通常は速やかに逃げ、自分から人を攻撃することは少ない。 大雪山国家森林レジャーエリアは雪山山脈の南西の主稜の後部。暖帯、温帯、寒帯の三種の森林帯に跨り、それぞれ独特の姿を見せる他、野生動物の資源も豊富。現在は保護が成果をあげ、台湾クロクマの主要な生息地の一つとなっている。